長崎の磐座


和多都美神社わたづみじんじゃ
長崎県対馬市豊玉町仁位字和宮55


■海幸彦・山幸彦の伝説を物語る磯良恵比須(いそらえべす)

 『魏志倭人伝』に、対馬の地勢を描写したくだりがある。 居所絶島にして、方四百余里ばかりなり。土地は、 山険しくして、深き林多く、道路は禽鹿の 径のごとし。
 禽鹿の径とは「けもの道」のことだが、実吉達 郎氏の『動物から推理する邪馬台国』で、興味深 い解釈にであった。禽鹿、つまり鳥や鹿だけでは なく、ほとんどの鳥獣が「対馬型」とよぶべき亜 種であって、なかにはこの島々にしかいない珍種 があるという。
 ツシマヤマネコはいうまでもないが、ツシマヤ マガラ・ツシマヒガラ・ツシマコゲラ・ツシマカ ケスなど、みな対馬が冠せられている。
 ツシマジカにいたっては、「ただものではな い」という。なんと、日本では約一万年前に絶滅 したニホンムカシジカだというのだ。「禽鹿の 径」を歩いていたシカは、一万年前に滅びたはず の、化石ジカだったという。まるで、ロストワー ルドのような島だが、それだけに古代信仰の痕跡 が色濃く残っているようだ。
(『磐座百選』より一部抜粋)





豆酘・八町郭つつ・はっちょうかく
長崎県対馬市厳原町浅藻


■天道信仰の聖地、天道法師搭

 対馬に伝承されているテンドウ(天道)信仰を 訪ねる。テンドウとは、いわゆる「オテントウサマ」のことで、 日神の子・天道童子の意とされ、母親が日光に感精 して懐妊したという話が伝わる。童子はのち法師 となり、菩薩と崇められた。独自の宗儀をもって いたことで、「対馬神道」ともいわれる。 厳原町、豆酘八町郭 にある天道法師搭を訪ねる。 『神道事典』で天道信仰をみると、「日神とその 子の天道法師にまつわる信仰」とあり、穀霊や祖 霊の信仰をも包摂する形で、対馬の習俗として伝 わっているとされ、さらに、 対馬の天道信仰の最大の特色は、社殿や神体 を伴わない祭祀形態にある。天道信仰の聖地 である天道地は、シゲと呼ばれる茂った森の なかに、カナグラと呼ぶ祭壇を設けるが、こ れらは神籬(ひもろぎ)と磐座の一種と考えることができ る、とあり、古代祭祀に見るような、祭儀の形態が 保たれていることが指摘されている。ここにいう カナグラとは「神座」のことで、磐座と同じよう な意味をもつ。
(『磐座百選』より一部抜粋)




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